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直を用いた。Fig.2は潟中の両センサーの位置とテータ収集方法を示した概念図である。なお、計測には計測地点での水深と佐賀大学構内での日射量および雨量の測定も併せて行った。さらに、観測衛星からのデータを有効に利用するために、酸化層と考えられる潟土の表面から採取した底質について、物理特性および含水比を変化させて反射率を計測し、その影響または他の土壌との関連性について検討した。

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Fig.1

Location of sampling station

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Fig.2

Schematicrepresentation of apparaatus array used to measure temperature and nutrients
3.計測結果および検討
3.1潟土の物性
潟土中の温度分布および栄養塩濃度分布特性は、潟土の物理的特性と深い関連性をもつものと考えられる。潟土の深度ごとの基本的物性はTable1に示される。観測地点は河川の直接的影響の少ない沿岸域に位置し、海底勾配は非常に緩やかである。底質は粘土(31.4%)成分とシルト成分(69.5%)が多い分布特性を示す。特に、土粒子密度、強熱減量IL、透水係数K、平均粒径Dmいずれも5〜15cm層において若干の違いが見られる。これはこの海域で棲息する干潟生物の巣穴が多数存在するものに起因したものと考えられる。すなわち、潟土中にはカニ類や線虫4)などの多くの底生動物が生活し、有機物を消費分解しているばかりでなく、潟土中に巣穴を掘ったり、移動することにより底質を撹乱(バイオターベイション)する。それによって底質表層での各種微生物の活性を高め、物質移動・拡散を促進し、潟土の各深度に伝わる温度の伝達へ及ぼす影響は大きいものと考えられる。

Table.1: Physical characteristics

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3.2潟土中の温度分布
Fig・3は潟土中の温度分布に大きな影響を及ぼす計測地点の水深と佐賀大学構内で測定された日射量および雨量の時間的変化さらにその季節的変化について示した。図示されるように観測期間中の天気は、夏季で雨天の8月25日と曇天の8月24日、冬季で雨天の2月16日、17日を除いて概ね晴天日であった。したがって、この期間中の日射量は曇天日と雨天日を除いて比較的高く、正午前後の最大日射量は0.9kw/m2前後の高い値を示した。また、計測地点の水深は、有明海奥部の潮位変動に応じて周期的な変化を呈した。すなわち、小潮時には一日中海底が干出し、大潮時に向かって潮位は増加する。また、干潟の表層およびそれに近い5cm深さの位置における温度の時間的変化は、気象の変動に追随し、日射量の変動に伴いその層の温度も変動する傾向が見られた。それに干潟域底質の季節的温度変動の場合、気象の影響を強く受け、夏季は表面や浅い層の温度が底層より著しく高くなって、冬季はやや低くなる。また、底質の表面や浅い層の温度は、日射量と干潟域の水深によって大きく影響され、日射量のピーク時刻と干潟の浸水時刻とがほぼ一致するとき、底質の表面や浅い層の温度の時間的変動は抑えられる傾向を示した。
Fig.4,5は計測期間中での潟土中の温度の季節的変化および潟土中の温度プロフィルを2時間毎に示したものである。このように一日の温度プロフィルの時間的および空間的変化は、その日の天候と潟面の浸水状況によってかなり大きく変化している。すなわち、雨天時には、目まぐるしく変化する日射量の変化に応じて潟面およびその近辺の温度は激しく変化している。また、晴天時には、日射量の急増し始める10時頃から潟面およびその近辺の温度は増大し、さらに下層へと伝導する。しかし、日射量の減少する18時頃から再び日射量の増大し始める翌日の8時頃までは、潟面から深さ20cm付近までの温度は減少の一途をたどっている。したがって、このことからも一日の中で大気と干潟域との間のかなり激しいエネルギー交換が行われていることが理解される。このように潟面近傍の環境を形成する要素・要因は互いに深くつな

 

 

 

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